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【レビュー】100円のプラモデルから、未来の1:20バイクモデルへつなぐ「作り方」の話/河合商会 スモールバイクシリーズ
河合商会という模型メーカーがあった。プラモデルや鉄道模型を手掛けていたが、2012年に倒産した。プラモデルを古くから知らない人でも「箱庭シリーズ」「風物詩シリーズ」(現在はマイクロエースが製造・販売している)は見たことがあるかもしれない。 さて、唐突に河合商会の1/20 バイク模型である。マックスファクトリーから1/12でも1/6でもなく、1/20のバイクプラモシリーズ「Rider's Portrait」が始まるのを前に、そもそも「1/20のバイク」ってどんな大きさで、どんな感覚を呼び覚ますものなのかを知っておこうと思ってヤフオクで買った。6個セットでざっくり6000円。安い……と思ったら、なんとこのスモールバイクシリーズは終売まで100円で売られていたらしい。はちゃめちゃ〜! 商品名は「アメリカンバイク カスタム」で、空冷Vツインに緑のタンク。パッケージを開ければ赤いフレームを中心に、グレー、透明、軟質の黒いパーツでそれなりに色分けされて並んでおり、デカールにはハーレー・ダビッドソンのロゴが印刷されている。フレームはタンクとリアフェンダー、リアサスペンションはもちろんスイングアームとチェーンまで一体になっていて、とにかくパーツ数を極限まで減らそうというチャレンジが見て取れる。 組み立て説明書は上蓋の裏に印刷されており、2工程にぎゅぎゅっと濃縮されている。基本的には接着剤不要と書いてあるが、「よわいぶぶんは、せっちゃくざいでほきょうしてください」と書いてあって、ユーザーにある程度の判断を委ねているところが良いと感じた。実際組んでみると、軸が太すぎ/細すぎ、あるいは穴が小さく痩せているといった部分も多い。当時のキッズはこれをなんとかうまく組み立てようとして失敗し、お小遣いを握りしめてまた買い求めて……というレジャーに興じていたのではないかと想像できる。 ディテールはごくごく簡略なもので、イマドキのバイク模型のように再現度を上げて塗装しようと考えると大変な改造が必要になる。エンジンとフレームを接合するピンもないのでエキゾーストパイプの位置からエンジンの定位置を探り出す難しさもある。しかし、そこにあるものをそこにあるように組み立てることで、この時代のこの価格のプラモデルが持っていたコンセプトが見えてくる。ただ組み上げるだけなのか、塗装するのか、より実車に近づけるのか。プラモデルそのものに「簡単or難しい」という概念があるのではなくて、このプラモデルをどう仕上げたいのかによって簡単にも難しくもなるのだと改めて感じる。 もっとパーツを分割し、シャープで深い彫刻を入れればこのプラモデルの「実物再現度」は上がっただろうけど、おそらく100円で売れるものにはならなかっただろう。反対に、もっと精密にして10倍の価格で売れたかと言えば、その領域にはより大型で“出来の良いプラモデル”が控えていたはずだ。1/20スケールで、100円だからこそ成立する、シンプルな楽しさがここにはある。自分にとって価値のあるものにできるかどうかは、このプラモデルから何を引き出し、どうゴールするかを思い描くチカラ次第だというのは、今も昔も変わらないはずだと僕は思う。 完成してみれば、なんでパッケージアートと違う色のバイクなんだろ……みたいなギモンを残しつつも、必要最低限のバイクらしさを持ったアラウンド'80sを感じるショベルヘッドのハーレーが出現した。短い時間で組み上がること、手のひらにポンと乗るサイズであることは、このスケール、この分割でしか味わえない。いまなら扱いやすい塗料や工作に適したツール/マテリアルはいくらでもあるから、こういう伸びしろだらけのキットを遊ぶ幅は当時と較べものにならない。 まして、現代の設計製造技術を使えば1/20のバイクにもっと実感のある精緻で立体的な彫刻が施せるはずだ。マックスファクトリーのバイクシリーズはそのまま置いといても楽しい色になっているし、塗れば一気に実感を纏うだけのディテールを持ち合わせている。さらにデジタル造形の恩恵を大いに受けた魅力的なフィギュアも付属し、世界観は一気に広がる。過去に近しいコンセプトを持ったバイクモデルがあったこと、そこに新たな要素と技術的な進歩が加わること。河合のスモールバイクは、たくさんの学びと、ポジティブな期待感を同時に味わえる素敵な模型だった。